自身のウェブサイト上に他人のパソコンのCPUを使って仮想通貨をマイニングする「Coinhive(コインハイブ)」を保管したなどとして、不正指令電磁的記録保管の罪(通称ウイルス罪)に問われたウェブデザイナーの男性の控訴審判決が2月7日、東京高裁でありました。
この判決で、栃木力裁判長は、男性に無罪を言い渡した一審・横浜地裁判決を破棄し、罰金10万円の逆転有罪となり、話題となっています。
今回は、この裁判となった事件について調べてみました。
裁判となっているコインハイブ事件とは?
コインハイブ事件として話題の裁判となっているこの事件は、ウェブ上にある自身のサイトを見せる際に、閲覧者のパソコンのCPUを利用してマイニングを行っていたことが問題である。とされたことによる事件です。
主な争点としては、プログラムがコンピューターウイルスなどの「不正指令電磁的記録」に該当するか否か。
一審の横浜地裁は2019年3月、プログラムの設置は閲覧者に知らされておらず、閲覧者の意図に反していたと認定する一方、閲覧したPCに生じる処理能力低下などは広告と同程度に軽微だと指摘し、「捜査当局による事前の警告がない中、いきなり刑事罰を問うのは行き過ぎだ」と述べ、不正指令電磁的記録には該当しないとして「無罪」の判決が出ていました。
それに対して、検察側が控訴して行われた今回の東京高裁の判決では、第一審での判決を覆しての「有罪10万円の罰金刑」とするもの。
今回の判決が大きな話題となっている理由、それは何なのか?
そもそもCoinhive(コインハイブ)とは?
Coinhive(コインハイブ)は、Webサイトに広告そのものが表示されている、従来の収益システムとは異なって、サイト運営者がサイト上に広告を表示することなく、そのサイトの閲覧者から直接的にリアルタイムで収益が得られるというシステムのことです。
そのため、新しい収益方法として大きな注目を集めていました。(※現在はサービスを終了済み)
事件となったことの発端は2017年9月下旬頃に、ウェブの記事を読んでCoinhive(コインハイブ)の存在を知ったウェブデザイナーの男性が、自身が構築する情報サイトにJavaScriptコードを書き加えて、Coinhive(コインハイブ)を設置したことにあります。
男性は、Coinhive(コインハイブ)を1カ月間ほど設置していましたが、2017年の11月下旬に知人のエンジニアから「運用にはサイト閲覧者の同意が必要ではないか」との指摘を受け、その後Coinhive(コインハイブ)をサイトから削除したとされています。
しかし、それから3ヶ月後の2018年2月上旬に神奈川県警が突然男性の自宅を家宅捜索し、翌月、3月28日に横浜地検が不正指令電磁的記録取得・保管の罪で略式起訴、横浜簡裁が罰金10万円の略式命令を出しました。
この事件当時、Coinhive(コインハイブ)は従来の広告の代わりとなる新しい収益システムとして注目される一方で、ユーザーのパソコンのCPUを許可なく使用するマルウェアであると問題視する声も出ていました。
モロさんとは誰?
今回のコインハイブ事件で裁判をしているウェブデザイナーの男性が「モロ」さんとしてTwitter上で事件について投稿しています。
本日高裁判決です。よろしくお願いします
— モロ (@moro_is) February 7, 2020
とても残念な結果となりました
— モロ (@moro_is) February 7, 2020
ネットの声も反応様々
逆転有罪がトレンドに上がっているから、何の話かを確認したら、老害感の強い話だった。
— 雪見圭 (@Jotrj3aRMCZa8J8) February 7, 2020
件の逆転有罪判決はまあ不当とは思うんだけど、「どう広告と区別するんだよ、今回の有罪の根拠に該当するような悪質な広告いっぱいあるだろ」と言及される広告の内容が総じて実際クソッタレなのが笑えない
— ほげ (@hogehoge61) February 7, 2020
コインハイブは裏でこっそり動いて気づきにくいから許しがたい、という一般人の感覚を理解できず、逆転有罪に騒いでるウェブとかスタートアップ界隈のコンプラ意識低い系関係者がいるから、迷惑広告が氾濫してアドブロッカーが生まれるような事態を招いたんだろうな
— 師匠 (@See_Show) February 7, 2020
SETI@homeをPCに入れていた事があるけど、ああいうものをユーザーの承認なしに無断で動かされては困るって事でコインハイブ逆転有罪は妥当な判決じゃないのかな。目に見える広告と違って隠れて処理が動き続けるのもどうかと思うし。
— スティールポート (@greenw2508) February 7, 2020
これきっかけで同意なしでのCPUリソース占有がアウト扱いになって最終的に無駄に動くWeb広告類が一掃されるんならええんやけどそうはならんのやろな
同意なくCPUリソースを使うのは、インターネット社会ではある意味当たり前。
利益を得たから、といっても他の数多のプログラムも何らかの目的があって動かしているわけで、これを否定したらネット社会を否定したことと同義。
同意を取ればいいといっても、それに気づかれなければ提供側が有罪?
そんなことを言っていたら何もできなくなる。あまりにもミクロで偏った視点で、非常に危険な判断と言わざるを得ない。
最後に
今回のコインハイブ事件、プログラム関係については個人的には詳しくないので難しいですが、ウェブ広告との違い、またそれがそもそも違法であるとその時点でされていたのかなど、色々な問題が含まれていますね。
ただ、ウィルスなど他人に迷惑をかけるプログラムなどはもちろん問題であり、言語道断ですが、こういった最新技術を利用した新しい案件に対してどのような法整備を敷き、またそれを周知させていくことも必要かと思われます。
今回一番の問題点としては、不正指令電磁的記録(ウイルス)に関する罪の適用範囲が曖昧であるためにどこまでも拡大解釈も可能な点であるので、法も時代に沿って変わる時期に来ていますので、キチンとした法整備が望まれます。


